●2010 小川町

上から順に瓦でつくられた植木鉢
敷き瓦(建具の模様から)
表面を鏝で磨いた瓦

●屋根の耐震施工と瓦造形展

伝統工芸館の中に展示されていたものです。
上から順に
鬼師 富岡さん(息子さん)の作品、
賞をとったとかかれていた作品
五十嵐さんのベンチ

●瓦のおはなし 

瓦のおはなし
群馬の藤岡に今も、達磨釜という釜で、
1枚1枚手で整形された瓦を焚いている五十嵐さんという
方がおられます。
この方法でつくっている瓦は日本でただ1人に
なってしまいました。(達磨釜は4つほどあると聞いています。)
この瓦のもつなんともいえない味わいと
五十嵐さんの人柄にふれて、
この屋根を葺くことになったのですが、
ものごとにはよい面、悪い面があり、
葺く作業は大変そうです。
その瓦葺き職人さんの金子さんの作業をみせていただき、
お話を聞くことができました。
金子さんは社寺のお仕事をされているNさん(5重の塔などのお仕事もされていて、
浅草にある瓦ストリートなどのお仕事もされています。)のもとで働き、
Nさんとのお仕事をされているところを誘われて、
この瓦を葺き始められたそうです。
はじめはとまどったよとおしゃっていましたが、
でも、この瓦のなんともいえない味わいは唯一のものだよねという
言葉には愛情をかんじました。
瓦はまず、先端の一文字部分からふいていくのですが、
両端の瓦はカタチがきまっているためいじれませんが、
その他の部分は瓦のカタチの組み合わせがよいように、
あらかじめ、順番を決めて、並べていきます。
それでも、1枚1枚の瓦に個性があり
重なり方もそれぞれ違うため、
たがねやサンダーをつかいカタチを整えていくのです。
そして、瓦どうしを重ねてみて、墨出しをして、
どこを削ればよいか確認します。
それを瓦ごとに必要な部分を削って調整して、
重ねて、調整しての繰り返しです。
工業製品の瓦であれば、
瓦割りと両端がきまれば、ドンドン重ねていけるのですが、
ここでは1枚1枚、気を配ってかないとできないのですね。
その削り方も、ただ削るのでなく
瓦は、瓦と瓦がかさなる部分の口の高さがそろって、
雨が流れる逆Rの高さがそろうときれいだからと、
その部分を優先して、
さらに引っ掛ける部分はしっかりとれるように
いじらないようにして、
削られていました。
美しさの理由って、あるものなんですね。
4分ほど狂いはありました。・・
建築に携わっている方であれば、むずかしさがわかりますね。。
手間もふつうの1.5倍から2倍かかるそうです。
(でも、金額にそんな差がなく。。申し訳ないくらいです。。)
でも、この瓦のよさとして、
第一に味わいのある色を、
第二に、おおらかなカタチをあげられていました。
このおおらかなカタチというのが葺くのには大変なのですが、
金子さん言われて、瓦をみてみれば、色だけでなく、
このおおらかなカタチが瓦屋根として全体に載ったとき、
なんともいえない生きた風景になるということに気づきました。
動きつづけている波みたいにもみえました。
お話や、作業をされているようすをみて
技術がなければできない仕事ですが、
それ以上にこの瓦が好きという気持ちがなければできないお仕事だと
かんじました。
また瓦以外のことも、すごく詳しくて、びっくりしました。
(・・友人と話していたのですが、腕のよい職人さんって自分たちの仕事以外のことも
気を配われていることが多いのです)
この瓦は、ひとりでは葺けないんです。
時間だったり、下地の準備だったり、必要な構造などいろいろな面があるので、
お施主さん、大工さん、設計者などの共感があって、はじめてできるものだと
おしゃっていました。
(自然素材をつかう場合は瓦以外でもいっしょだと思うのですが、
誰にでも面倒がみられるわけではないですし、)
自分から売るものでなく
共感してくださる方に、葺いていただきたい。そういうふうにもおしゃっていました。
瓦工事は10日はお休みで、月曜日までの予定です。
共感してくださる方がいらしたら見に来てくださいね。
金子さんとお話をしていたのですが、
足場が取れたら南側道路からだけでなく、東側面もみえそうです。
うれしいですね。

●瓦のカタチをつくる

五十嵐さんのところに何度かお伺いしていますが、
今回、はじめて、瓦の素のカタチをつくる場面をみることができました。
土を機械にいれるとベルトコンベアのようなものにのって瓦の曲線がついた
板がずっと流れてくるのです。
そしてそれを瓦の大きさに機械がカットしていきます。
そしてガチャという音とともに大まかなカタチがつくられるのです。
きんたろうあめみたいで面白かったです。
そのおおまかなカタチででてきた瓦を天日干しして、
1枚、1枚整形していくのです。
その整形していくようすは何度見ても感動的!ですね。
3枚目は、天日干し中の瓦の写真です。
なんだか気持ちよさそうにもみえますね。
つくっていく工程もなんだかみなきれいです。

●炎の匠

釜口をふたをした後、側部分も空気をとめます。
写真のほうに、炎は赤くもえつづけています。
他の入り口をとめたせいか、
さらに勢いをましたようにかんじます。
そこに瓦を積み、
間を土で埋めていくのです。
手で投げて、土をつけ、
鏝をつかい、土を埋め、
それでもだめなところは、
手で、行われていました。
釜は生きているものが
休みをとるまえの
輝きというか強い意志を
もって、燃え上がったようにみえました。
そして、煙は松の黄色にかわりました。
これで、終了。。ではないんですよね。
私たちはこれで帰りましたが、
一休みされた後、
ゆっくり火を落としていきます。
おつかれさまです。
この日感じたのは、
瓦は土であり炎であるということ。
穏やかなイメージだった五十嵐さんの
火と対峙する強さもかんじました。
五十嵐さんのつくられる瓦は
既製品のものとちがって、
炎の後や、手の後がわかります。
それが屋根にのったとき、
なんともいえない味わいになり、
また呼吸する瓦として、
住まう人の健康をしっかり守ってくれるのです。
写真は、離剥窯変瓦です。
手作りなので、この他、いぶし瓦にも、いろいろな種類があります。
ものづくりをされる人としての尊敬の念をこめて。
ありがとうございます。
そして、お体を大切にされてください。
この五十嵐さんの仕事がつながっていきますように。

●いぶす

水をかけた後、
今度はふたをしていきます。
ふたはつくったものもあり、
ドラム管のふたもあるそうですが、
炎であっという間に、ちりじりになっています。
熱くもえたつところに鉄板でふたをした後、
泥で隙間をなくしていきます。
泥は先程と同じ、
このために練ったものです。
五行。。でいうと火に勝つのは土なんですね。
こんなにも燃えているのに、
釜口以外の
達磨釜の肌を触るとひんやりしています。
これには本当に驚きでした。
厚いところは60cmもあるそうです。
火に強いものは土。
土である瓦を
土でできた釜にいれて、
炎で焚くと屋根にのせる瓦になる。。
不思議ですね。
土でふたをした後(これ、すごく熱いと思うのです。五十嵐さんは、
土をなげつけるようにして、つけていきましたが、うまくいかないところは、
素手でした。。)
ご近所に住まわれているお姉さんが、
箱に砂をいれ、タイヤをかけ、もれないように
ふたを強固にします。
そして、休むまもなく、もう片方の口、
両サイドの口をふさいでいきます。

●いぶす

10時ごろ、
もうそろそろだよと
五十嵐さんがおっしゃりました。
後、30分くらい。
くべ続けている薪のほかに、
釜口のところに、薪が高くつまれていました。
一気に松の薪をくべ、高温にしたところに
水をかけ、
ふたをしいぶしていくのです。
ことばで書くと簡単ですが、
本当に火との戦いというかんじがしました。
達磨釜の釜の片方側に人5人くらいのスペースがあるのですが、
そこに薪を充填するのですが、
当たり前ですが、
燃えやすい薄い木を最後に入れるので、
火の勢いは相当が強くって、
写真だとわからないかもしれませんが
まさに火に飛び込むような
かんじでくべていかれます
五十嵐さんが半纏を着ていらっしゃるのは、
素肌だと熱くていられないからです。

●釜焚き

夜が明けました。
私たちが仮眠をしている間も、
五十嵐さんは、
薪をくべつづけられていました。
山のようにあった薪も、一山なくなっています。(私たちの背の1.5倍くらいの高さがありました)
最終的には、二山ほど使用されていました。
燃えてくると煙の色が変わるというので、
みてみると、昨日白かった煙が黒くなってきています。
この煙の色、最後に松を入れていぶすと黄色になるのです。
不思議ですね。
五十嵐さんの顔に疲労の色がみえてました。
でも、凛々しいなにか、
通ったものをかんじます。
火との戦い。
五十嵐さんは、そうおしゃっていました。
火との戦い。
だけれど、最後は、火におまかせすると。
火の温度は、あがって、くべる場所で写真を撮ろうとおもっても
熱くて、じっとしていられないので、
準備してから、撮る。。
そんな状態になっていたのですが、
(カメラマンの方が撮影に来られるのですが、近くだと、カメラなども溶けてしまうそうです。)
かわらず、五十嵐さんは強いですね。
横から釜の様子をみせていただきました。
瓦が
透明にみえました。
生きているみたい。
さなぎなどが炎につつまれて、生まれ行く
そんなかんじです。
火の音、炎の色。
温度計でなく、経験で、温度を調整されていくそうです。
火って、綺麗、そう思っていたのですが、
綺麗だけれど、怖い。
そういうかんじがします。
怖いということばをすると
吸い込まれてしまいそうだからねと
おしゃっていました。

●釜焚き はじまり

夜の1時半。
煙がでる作業なので、近隣に配慮した時間設定です。
釜焚きはスタートします。
実は、この日、はじまりが少しだけおくれてしまいました。
土でふさいでいたふたをとると、
火は、ゆっくりと確実に燃え続けています。
そこへ再び、薪をくべ始めます。
薪は、だるま釜の口、2箇所。
火加減をみながら、交互にくべられます。
この作業がずっと、
夜の1時半から、10時半と永遠につづくのです。
しかも、火はだんだんと強くしていくため、
疲労のピークとなる時間帯につれて、
忙しく、
また火は容赦ないほど強くなってきます。
夏場は、1回の作業で5キロやせられることもあるのだとか。。
大体月に2回、(冬場は月に3,4回の時もあるそうです)この作業は繰り返されます。
(このほかに、瓦の整形や天火干し、荷揚げ、配達とすべての作業をすべて
されています。・・ふつうの方が一人でできることではありませんよね。。)